草壁皇子★


≪シェキナー白山菊理姫
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数千メートル級の峰々の群立するアルプスの山波のように、
天智、天武、持統天皇藤原鎌足不比等、と、
大人物の輩出には、事欠かなかったあの時代の、
小さくとも、欠かすことの出来ないエピソードとして、
草壁、大津の異母兄弟の話は、語り伝えられています。


文武に長けた偉丈夫の大津皇子と、
ひ弱な草壁皇子


その溺愛する実子、草壁のために、
ライバル大津を陥れたすざましい母親、持統天皇


大津皇子の一生は、
たとえ悲劇性に彩られていても、
質的には、持統天皇のそれと、
そう変わらないように思われます。


同じように華やかで、主役の器なのです。
草壁皇子のそれとは、まったく違うものです。


そういう、いわば、古代史上に、
黄金のように燦然と輝いている道ではなく、
ひっそりと、けれど徹底して諦め抜く、
魂の「錬銀術」のような過程も、当時からあったのではないかと、
いつしか思うようになりました。


確かに持統天皇の治世は、堂々たるものでした。
大津皇子の冤罪と処刑は、持統天皇という、
大輪の花が咲くための通過儀礼であったといえるでしょう。


そして、もしかすると、
草壁皇子の急死も。


他者の事情をなんとなく察して、
それと意識せぬまま自ら「受難」の道を選びとっていく子どもたちは、
どんな心持ちでいるのでしょう。


それは、まぶしく輝く金ではなく、
どこにも光のない場所で、静かに存在している
銀にも似たものかもしれません。


(梨本香歩「丹生都比売」)