草壁皇子を見守る「丹生都比売」☆1


≪シェキナー白山菊理姫
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初めて、「丹生都比売」を読んだときには、その物語の美しさに、
感嘆はしたものの、
母が、政治的な野望のために、実子にまで手をかけるという内容に
かなり抵抗を感じました。
犠牲の上に立つ繁栄にも。


母性というものは、そういうものではないだろうと。
鸕野讚良皇女に、怒りを感じたかもしれません。
完全に、自分を草壁皇子側で、読んだからだと思います。


今回読み返してみて、
落ち着いて、鸕野皇女の止まれぬ本性の哀しみとして
受け止められたのは、
2015年に入って、5次元ナディによって、
高次の母性から慰めと愛を受け取ることが
新たなレベルでできていたからかもしれません。


わたし自身が、高次の母性に支えられていたからです。


そういう状態で読み返してみると、
草壁皇子も、現実の母性には、見放されていたけれども、
「丹生都比売」という高次の女神に見守られ、支えられていたからこそ、
それに耐えられていたのかもしれないと感じました。


何もない状態では、やはり子の立場として、
絶望しかないでしよう。



草壁皇子は、非常に繊細で脆い質の持ち主です。

草壁皇子は、体から「ほう」という音を立てて、
何やらがするすると抜けて行くのを感じました。


おかあさまから闘争心の剥き出しになった気が
発せられるのに出くわすと、いつもそうなるのです。


(梨本香歩「丹生都比売」)


すごくわかる表現です。

草壁皇子が、大津皇子といっしょに大海人皇子から
弓の手ほどきを受けたのは、
何年前だったでしょうか。


幼い子のために特別にあつらえた弓でしたが、
草壁皇子がいくらおとうさまの言われるとおりに構えてみても
弓はびくともしませんでした。


それなのに大津は、まるで生まれてこのかた
ずっと扱ってきたといわんばかりに、一度で見事に的を射たのです。
大海人皇子は、目を細めて大津を讃え、
更に熱心に教授を始めました。


幼いながら口を真一文字に結んで、
きりりと弓を構える大津の様子は、
草壁皇子から見ても大変りりしく、
たのもしく思えました。


ご自身はといえば、矢をつがえあぐねて、
ただぼんやりとおとうさまと大津のやりとりを眺めている
ばかりでした。


そのうちふと、草壁皇子は、少し離れた柱のところから、
この三人の様子を見つめている人影に気づきました。
お母さまの鸕野讚良皇女でした。


おかあさまは、私を情けなくお思いに違いない。
微笑んでもおられない
草壁皇子は、悲しく手元を見つめました。



(梨本香歩「丹生都比売」)