スサノオについての考察2☆大気都比売神(おおげつひめ)


岩戸の事件によって、高天原を追放されたスサノオは、地上で飢えて
大気都比売神(おおげつひめ)に食べ物を求めます。
大気都比売神は、スサノオに、ふんだんに食べ物を与え満たします。


ふと、この食べ物はいったいどこから得ているのだろうか?
と疑問に思ったスサノオが、食べ物の用意をしている大気都比売神
覗き見ると、その鼻や口、尻から食材を取り出し、それらを調理し御馳走を
作っていた。
そのことを知ったスサノオは、穢れたものを食べさせられたと、
激怒し、大気都比売神を殺害してしまう。


殺された大気都比売神の死体の頭から蚕が、両目からは稲が、
両耳からは粟が、鼻からは小豆が、陰部からは麦が、お尻からは大豆が
発生した。


このような殺害された神から食物が生じるという神話は、
世界中に見られるということです。


吉田敦彦氏は、この神話を次のように解釈しています。

古事記』と『日本書記』の神話に語られている、
食物がまだオホゲツヒメやウケモチの身体から、
分泌されたり排泄されていくらでも出てきた時代というのは、
ですから世界のいわば幼児期に当たっていたと言うことができるでしょう。


大昔に人間の先祖が、何の苦労もせずに自然に産出される食べ物を
食べて生きていた、「楽園」の状態とか「黄金時代」があったという話は、
方々の神話にあります。


(吉田敦彦「日本の神話」)


そして、吉田氏は、このようにも解釈されています。

つまりオホゲツヒメを殺すまでのスサノヲは、身体つきはもうすっかり大人で、
その上世界中を何度もめちゃめちゃにしてしまうほどすごい力を持っていたのに、
することはまるで赤ん坊か、無責任なだだっ児のようだったとされているわけです。


ところが、オホゲツヒメを殺してしまったあとでは、スサノヲのやることは
たちまちがらりと一変します。


(吉田敦彦「日本の神話」)


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