8次元的な視座1


「ベロボティアの輪」より


『次の瞬間、若鹿の目と出会った。
彼女がまっすぐこちらを見つめたんだ。
僕は、時間の感覚を喪失した。
僕が覗いているのは、自然そのものの黒い目だった。
その時、僕の内部で何かが起こった。
僕を見つめ返しているのは、僕自身の目であることを悟ったんだ。
人間としての僕と、動物としての鹿の間の境界が跡形もなく溶け去り、僕らはひとつになった。
僕は、ハンターであると同時にその獲物となったんだ。
それは、ただの想像ではなく、現実だった。
想像より百倍もリアルだったんだ。
僕は、極限の分子レベルから魂そのものの深みに至るまで、存在のあらゆるレベルで、その動物と繋がっていた。


その瞬間、すべてを論理的に説明し、表現し尽くしたいという、ずっと僕をつき動かしていた欲求を見失った。
忌わしい合理性の呪いから解放されたんだ。
それは、何事にも煩わされずに、集中して存在できる瞬間だった。


次の一瞬、ひとりでに手が動き、ライフルの撃鉄を起こした。
すべては、僕を鹿と結び付けているエネルギーと同じ流れのなかで起こった。
何もかも自然で、適切だった。
というのも、僕は起こっていることの両側を感じていたからなんだ。
僕は、殺す準備と、殺される準備、両方できていた。
すべては同じ連続体、同じバランスの一部だった。


澱みのない動きのなかで狙いを定め、引き金を引いた。
最初、音が聞こえなかった。
美しい野生動物の鹿が少し揺れ、沈み始めるのが見えただけだった。
スローモーションの映像を見るかのように、僕は倒れていく彼女を見ていた。
その動きはまるで舞踏のようだった。
同時に、倒れてゆくのが、この人生から脱落していくのが、自分であるという感覚を抱いたんだ。
最後に彼女の目が閉じたところで、繋がりが途絶えた。


その時になってはじめて、ライフルを撃つ音、死んでゆく野生の音、周囲の空間を満たす轟きが聞こえた。
僕は、頭をもたげ、まわりを取り囲む丈の高い松の木のてっぺんを見上げた。
そして空を見た。
信じられないことに、ほぼ頭上で虹が輝いていたんだ。
僕は、言い知れぬ感動を覚え、濡れた枯れ草の上に座り、泣き始めた。


ずっと僕は、自分のことを何事にも動じない強い男だと思っていたんだけれど、その時は、子供のように泣いたよ。
僕の涙には、苦痛と歓喜が入り交じっていた。
心も身体もなにもかも深い感動に包まれていたんだ。
骨の髄まで自分が変わるのを感じた。
多分、それは、これまでの人生のなかで、僕が解釈や説明をしようとしなかった唯一の体験だったように思う。』


わたしは、今、再度8次元をとても示されています。
同じように、今、必要なかたに、届きますように願って☆