「落ちこぼれの男の子」

「落ちこぼれの男の子」


わたしが、アルバイトで、ある会社で働いていたときのこと。


営業系業務の会社でした。
あるチームが、優秀で、バンバン成約を取るんです。
そのチームの中に一人だけ、社員さんなのに、
全然成約が取れない男の子がいて、
いつもそのチームのメンバーに馬鹿にされたり、
罵倒されたりしていました。


小さな社会の中で、そのチームの人は、エリート扱いされ、
どんどんその態度は助長され、
その男の子への態度も更に目にあまるものになっていきました。


ある時、
「お前がいなければ、もっと(エリートチームの)成績が上がるんだ!」
という声が上がって、そうだそうだという流れが、
その中で出来上がってきました。


わたしは、それを見ていて、それは違うな〜と思っていました。


人道的にというのではなく、正義感からでもなく。


それは、なぜかというと、その男の子のオーラは、
とてもきれいで、極上で、マスターレベルだったからなんです。


つまり、どういうことかというと、その男の子は、
みんなが一番嫌がる、どん尻の、落ちこぼれの役を、
そのチームで引き受けていたのです。


みんなが嫌がるその役目を。


わたしは、それを傍目で、見ていて、
こういうこともあるんだな〜と思っていました。


でも、彼らは思いあがり過ぎた。


とうとう彼を左遷してしまったのです。


どうなったと思います?


そのチームは、全然成約を取れなくなりました。
なぜかというと、今までその男の子が引き受けてくれていた
「どん尻、落ちこぼれ」に自分がなることを恐れて、
みんなが不安になったからなんです。


安心して、営業ができなくなったので、みんなに焦りが出ました。
電話での営業なので、微妙なエネルギーが成約の可否を決めるんです。


今までは、その男の子がいてくれたので、
みんな安心して、自分の仕事ができたのです。
自分が落ちこぼれで、どん尻になる心配をすることなく。


彼は、立派に働いていたのです。


みんなの為に、しかも、どんなに罵られても、
彼は本当に優しい、澄んだ、慈愛のエネルギーに満ちていたのです。


でも、やっぱり表面上はボロボロでした。
自分を恥じているようでした。
自分で、自分の素晴らしさに気がついていないようでした。


一番嫌な役目を引き受ける。
これは、実はなかなかできないことなんだと、
いつか気づいてくれたらいいのになと思っていました。


何度か、話しかけようかと思ったけど。
出来ませんでした。


そして、ついに居なくなってしまったのです。
ときどき思い出して、彼は気づいたかな〜?とか思うんです。


自分の素晴らしさに。
これ、実話ですよ。

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